◆ IEEE ICASSP 2025 参加報告 改めインド滞在記
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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第128号
2025年5月9日 発行
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はじめに
みなさんこんにちは! 今月号のASJ Freshニュースは,学生・若手フォーラム代表の挨拶と,4つに開催されたIEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP) 2025の参加報告です!
新年度のご挨拶(学生・若手フォーラム代表)
日本音響学会 学生・若手フォーラム代表の竹内です。 私たち学生・若手フォーラムでは、音響学に関心を持つ学生や若手研究者の皆さんが、学会活動や研究をより楽しめるよう、情報発信や各種イベントの企画・運営を行っています。
昨年度も、当フォーラムの開催するイベントに多くの方にご参加いただきました。今後も、皆さんの交流の輪がさらに広がり、音響学の魅力と奥深さを実感できるような企画を目指してまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。また、学生・若手フォーラムでは一緒に活動する仲間を随時募集しています。活動に興味のある方、フォーラムで一緒に学会を盛り上げてみませんか?ご連絡お待ちしています。
末筆になりますが、音響学会をはじめとする関係各所の皆様や先生方におかれましては、日頃より当フォーラムの活動にご支援をいただきありがとうございます。引き続きご支援・ご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
(竹内大起 学生・若手フォーラム代表)
IEEE IACSSP 2025 参加報告
若手フォーラムメンバーの坂東 (産総研) です.インド・ハイデラバードにて4月6日 ~ 11日に開催されたIEEE ICASSP 2025に参加してきました.ICASSPは,IEEE Signal Processing Society (SPS) が開催する音響,音声,信号処理におけるフラッグシップ国際会議の一つで,ASJでいうと電気音響や音声で発表される方はなじみが深い会議だと思います.秋のInterspeechと異なり,音響や音声だけでなく,画像や電磁波など信号処理に関する幅広いトピックを扱っている点が特徴でもあります.坂東は,多チャネル自己教師あり学習に基づく遠隔音声認識のフロントエンドに関する発表をスペシャルセッションにて行いました.また,このほかに産総研での研究成果を早大 吉永さん・東大 野﨑さん・慶応 柴田さんに発表して貰いました.それぞれ,環境音分析システムを少量の教師データを用いて構築する研究を,異なるアプローチ・視点から取り組んで貰った成果です.
インドは国際会議の参加であっても入国にビザが必要で,今回はe-Conference Visaと呼ばれるビザを取得して渡航しました.まず会議主催者にInvitation LetterとClearance Letterを発行してもらい,これらを添付してビザを申請します.入国の際には,承認されたビザと申請書類一式を持参して,入国審査を受けることになります.他の国でも同様ですが,入国審査時に必要書類を持参していないと (パスポートだけだと),入国がエクストラ・ハードモードになるので,関連書類はできるだけ手荷物に入れておいた方が吉です.滞在先の情報に関する書類なんかは割と忘れがちです.今年は,ビザの都合で参加者の国籍分布が例年とガラッと違ったのが印象的でした.一方,インドの方が沢山参加されていて,何度か話しかけても貰ったので,普段話せない人たちとも議論が出来てとても良かったかなと思いました.
今年はICASSP 50周年ということで,ポスター・企業展示会場のホールには,記念ブースが設置されていました. 各回のダイジェストポスターが並んでおり,各会議のトピックを表したワードクラウドが印象的です.ニューラル・ネットワークは,ICASSP 1989 ~ 1999頃のホット・トピックの1つだったようです.その後,再度登場し始めるのは2012年以降で,そこから現在に至るまで猛威を振るっています.また,初回のICASSP 1976から,常に “Speech” がほぼ一番大きいトピックとして目立っているのも印象的です.
インド滞在記
さて,筆者は,現地で酷い胃腸炎になったので,その体験記を残しておこうと思います.インドでは「水道水がヤバい」と色んな人から聞いており,渡航前から気を付けてはいました.様々な記事で,インドの腹痛の原因は「スパイス」「油」「不衛生な水」と書かれていて,行くまで水以外はピンとこなかったのですが,行けば分かります.まず,あらゆる料理にはスパイスが多分に含まれており,毎日(とても美味しい)食事の度に,何かの成分が自分の胃腸を攻撃していることを強く感じます.また,多くの料理は油分を沢山含んでおり,これも胃腸への負担を与えます.大半の日本人渡航者は,これらにより軽い下痢になっていたと思います.私も最初の4日程で,自分の腸内細菌が死滅してく様を感じ取ることが出来ました.持ち込める範囲で,日本食等の食べ慣れた食品を出来るだけ持ち込むことをお勧めします.
滞在5日目あたりで,知人が酷い胃腸炎になり,かなり辛そうだなと心配していたですが,私も帰国便当日の12日から酷い下痢に襲われ,朝から何も食べられなくなりました.シンガポールに向かう深夜便では,どうも脱水になったようで,手が震えてうなされていたのを覚えています.水では脱水は解消しない,という言葉を実感しました.スポーツ・ドリンク一択ですが,インドでは入手が困難だったのでコーラで凌ぎました.ポカリ等の粉を持参しましょう.その後,帰国してから症状が悪化し,摂取したものがそのまま体を通過するようになってしまったので,「あぁ,私の胃腸は,いま全く仕事をしていないんだな…」と絶望したのを覚えています.なお,帰国後,内科を受診しましたが,診察を拒否される場合があるので注意です.インドでは特別な手続きが必要な感染症の恐れがあるためだそうです.事前に電話で診察して貰えるか確認しましょう.回復には絶食が大事です.ちなみに,絶食3日目あたりから体温が平熱より下がり始めたのでビビりました.18日くらいからお粥が食べられ始め,19日には固形物が排泄されるようになり,歓喜の余り家で叫んだのを覚えています.
さて,最後に今回の反省点をまとめたいと思います.今回,筆者は,水道水にはかなり気を付けていたと思います.ホテルでは,毎日3Lのミネラルウォータが無料配布されていたので,飲用はもちろん,歯磨きやシャワーにも用いていました (発表日の前日を除き).他方,スパイス・油は想定外で,自分の胃腸のシステムが日を追うごとに崩壊していく様を感じ取っていたのを覚えています.多少の日本食は持ち込んでいましたが,自分の胃腸はスパイスに脆弱だったようです.これは根拠のない私見ですが,どうも現地のヨーグルトは食べた方が良かった気がしています.衛生上の観点から何となく避けていたのですが,スパイスで壊滅した腸内細菌をヨーグルトで復活させる必要があったのでは,と思っています. 自分の周りでは,ヨーグルトで体調不良になった人はいなかったので,(水等でかさ増ししていない) ヨーグルトは衛生的だったようです.次回,インドに渡航する際は,スパイスだけでなく,ヨーグルトも堪能するようにしたいと思います.
おわりに
インドは,10年に1回くらい学会で渡航する機会がやってきます.人生観が変わりうる国なので,皆さん次の機会があれば,是非堪能して貰えたらと思います.