ASJ Freshニュース第109号(2023年10月02日号)

ASJ Freshニュース

◆ ASJ 東海支部 50 周年記念式典 & 共催イベントレポート

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日本音響学会 学生・若手フォーラム 
ASJ Freshニュース 第109号 
2023年10月02日 発行 
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はじめに

9月25日に日本音響学会東海支部50周年式典が秋季研究発表会の前日企画として開催されました.
共催企画のポスター発表ディスカッションとともに,ベテランと若手による活発な交流・ディスカッションがなされ, 小さな鰻屋会場に熱気のようなものがみなぎりました
今回の Fresh ニュースはその当日の模様をお届けします!

ATR音素バランス503文 j01 参照

基調講演

歴代支部長の挨拶の後,Google DeepMind の全炳河様に基調講演を行っていただきました.『音声研究者のキャリアの一例』と題されたご講演は,現在にかけて統計的音声合成の第一線でご活躍されてきた全様ならではの経験談やメッセージが盛り込まれ,多くの若手研究者にとって良い刺激になったのではないでしょうか.

なお, 全様に本講演の発表資料をご共有いただきました.以下のリンク先からアクセス可能です.

  • 講演資料 (PDF): Google Drive (ASJ東海支部)
    ※本資料の掲載内容(スクリーンショット含む)のSNS投稿や二次利用はお控えください

 

パネルディスカッション

博士学生や若手研究者へのアドバイスとして「研究の秘訣」をテーマに5人のパネリストをお招きして,ご討論いただきました.

  • 全炳河 様(Google DeepMind)
  • 塩田さやか 様(東京都立大学)
  • 米村美紀 様(前橋工科大学、日本音響学会 学生・若手フォーラム 代表)
  • 羽田陽一 様(電気通信大学、日本音響学会 会長)
  • 天野成昭 様(愛知淑徳大学、日本音響学会 東海支部 支部長)

以下では,白熱したディスカッションの内容をギュギュっと EVS 並みに情報圧縮してお送りします.

はじめにちょっとしたアドバイス(天野先生)

言葉の能力:わかりやすく,論理的に

  • 日本語:研究費の申請,就活
  • 英語:国際会議,論文,共同研究

努力すれば身につく

  • まだ若いうちに,効率を考えて
  • おすすめの本
    • 『文章力を伸ばす』[阿部 2017]
    • 『「分かりやすい文章」の技術―読み手を説得する18のテクニック』[藤沢 2004]
    • 『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』[倉島 2012]
    • 『日本語パラグラフ・ライティング入門: 読み手を迷わせないための書く技術』[田村+ 2022]

議題①:アイディアの生み出し方(テーマの決め方)

  • 最初は先生から与えられたもので良いが疑うこと.本質はなにかを見極めて,深い洞察を加えて見方やアプローチを変える.(羽田先生)
  • 扱うデータに注目する.得られた結果は手法ではなくデータに固有の結論ではないのか?トライアル&エラーを繰り返す.(塩田先生)
  • 自分のできることから探す.実験から何がわかるかを模索する.人がどう思うか?を考える・聞いてみる.(米村先生)
  • 顧客は何ができる・できないかが分からない.問題に対してまず今あるものを適用してみる.動かないなら原因を追求し新しい方法を考える.自分がそう思わなくても顧客の需要があるならば必要な技術である.(全様)
  • 学んだことを活かすのが難しい人は,習ったことをとりあえず使ってみる(羽田先生)
  • 研究以外でも頭の片隅で考えつづける,思いついたらすぐにメモを.
    社会とのつながりを意識する.流行りに迎合するばかりでなく学術・社会的意義,波及効果のあるテーマ選択を.(天野先生)
  • 波及効果が大事.しかし,学生のうちは基礎に注力してから応用を.(全様)

議題②:研究作業の進め方

  • 短期~超長期それぞれで目標を明確にして毎日コツコツ.難しいことを最初に簡単なことは後.
    複数テーマはフェーズをずらして進める.
    1テーマ終了後に次のテーマを追加していくと,短い周期で常に成果が出続ける.
    • 『なぜあなたの研究は進まないのか?』[佐藤 2016]
    • 『理系のための研究生活ガイド テーマの選び方から留学の手続きまで』[坪田 2010](天野先生)
  • 締め切りまでに逆算してスケジュールを立てる.(米村先生)
  • 四半期単位や年単位での企業目標や,製品のリリース目標,学会の投稿締切など,締切駆動でスケジューリング.大きいチームでは許可も必要,イレギュラーに備えて柔軟に計画を立てる.
    データがあれば目処が立ちやすい(計算機の並列化,人員の役割分担).(全様)
  • 基本的には締切駆動.学生の要望を聞いて計画を立てる.必要なデータや実験を適切に見積もるように指導.(塩田先生)
  • 成果の出やすいテーマとチャレンジングなテーマを並行する.そのための研究基盤を築いておく.(羽田先生)
  • 普段の研究と並行して,ライフワークとなるテーマを模索している.(米村先生)

議題③:研究者間の交流

  • 学会発表で経験を積む.研究以外でも交流して信頼できる仲間づくり.(天野先生)
  • 若手フォーラムへの参加は仲間作りに有効.ご興味のある方はぜひ(米村先生)
  • 懇親会はおすすめ.国際会議のバンケットで日本人同士で集まるのはよくない.英語で積極的に交流を.ラボの先輩・後輩・共同研究者,海外の研究者 etc. 色んな人と交流を.(全様)
  • 学会で知り合いを作るのは大事.若手フォーラムで同期の相談しやすい知り合いができた.(塩田先生)
  • 懇親会を通して共同研究が始まることもあるので積極的な参加を.(羽田先生)

議題④:研究資金の獲得

  • 査読者はなるべく役立つ・理解できる・優秀な人の研究を選びたいが,普段の仕事もあるので時間を多く割けない.短時間で魅力が伝わるように工夫する.(天野先生)
  • Google のスカラシップには色々なプログラムがある.やはり読みやすくわかりやすい申請書がよい.スポンサーと一緒に書くものもある.内部の人とのつながりがあると有利.(全様)
  • 色々な獲得の方法があるので,リスク分散の意味で複数の予算を獲得する方法もある.(羽田先生)
  • 分野外の人に申請書を読んで伝わらない部分を修正.他分野の知り合いに読んでもらう.(米村先生)
  • 分かりやすさが大事.高校生が読んでわかる申請書作りを.(天野先生)

ポスター・デモセッション

「温故知新」をテーマに,最先端のアプローチだけでなく,ベテランの方々が築き上げた手法・知識に再び目を向ける機会として,
また,これまで発表の機会が限られてしまった研究に光を当てる場として企画されました.
若手・ベテラン,大学・企業を問わず,音分野の幅広い研究発表・デモ発表がなされました.

おわりに

論文やインターネット上でしか見かけたことのない研究者を現地で目の当たりすると,本当にいたんだ!という感動があります.次の記念式典があるとすればかなり間が空いてしまいますが,同じように学生や若手の方は次のベテランとして,ベテランの方はベテラン中のベテランとして,音分野の研究を盛り上げていけるとよいですね.

今月号は記念式典だけでお腹いっぱいですね.というわけで,1日目のビギナーズセミナーと,お昼の学生コーヒーブレイクの模様は次号以降にお届けします.

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