ASJ Freshニュース 第69号(2020年3月31日号)

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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第69号
2020年3月31日 発行
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*♪*━━━━* 目 次 *━━━━*♪*

◆ ASJ beginner’s seminar in VR参加報告
◆ イベントを振り返って~運営側からのメッセージ
◆ 国際技術コンペティションDCASE2020 Challenge Task 2の紹介

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 3月は卒業の季節ですね,卒業生の皆さんおめでとうございます!ところで今ほとんどの卒業式は中止となって,とても残念でしたね。皆さんくれぐれもお体に気をつけて,一緒にこの時期を乗り越えましょう!

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ASJ beginner’s seminar in VR
参加報告
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1.はじめに

 3月15日,本学生・若手フォーラム主催のASJ beginner’s seminar in VRが開催されました(詳しい内容はこちらから)。このイベントは,音響分野の学生・若手研究者,または音響分野に興味がある学生に向けるイベントです。元々日本音響学会の研究発表会の開催期間でStudent Dayなどのイベントを開催する予定だったのですが,今年は新型コロナウイルスの影響で研究発表会が中止になったため,残念ながらイベントも全部中止となりました。そこで,我々学生・若手フォーラムはどうしても学生・若手研究者の交流の場を設けたいという思いで,感染症の拡大防止も考慮し,インターネット上のバーチャルイベントの形式で今回のASJ beginner’s seminar in VRを企画しました。

2.バーチャルイベントについて

 バーチャルイベントに参加するのは今回が初めて,私としてはとても新鮮な感覚でした。最初は大学のインターネット回線からアクセスできなかったり,自宅のノートパソコンの再生音量が小さかったり,色々問題もありましたが,最終的に全部解決しました。ちなみに私は光回線のノートパソコンで参加し,音の再生はブルートゥーススピーカーを使いました。

 今回のバーチャルイベントはclusterというVRライブのプラットフォームで行われました。バーチャル会場は実際研究発表会のオーラル会場と似たような感じで,進行も普通のオーラル発表と全く同じでした。一方,バーチャルイベントの特徴として,実際の研究発表会にはないエモーションとコメントのシステムがあります。実際参加者の皆さんはシステム内のエモーション(拍手,ハートなど)を使って会場を盛り上げていました。また,普段の学会のように参加者の皆さんとしっかり交流することがバーチャルイベントで実現しづらくて残念でしたが,コメントシステムのおかげで皆さんは気軽にコミュニケーションを取ることができました。(質疑応答もこのコメントシステムで行なわれました。)

会場の様子

 さらに,VRサービスを利用できない方にも配慮し,YouTubeでも生配信が行われました。実際YouTubeの方で聴講した感想として,clusterのようなリアルタイムのリアクションはできないかもしれませんが,発表を聴講するのは全く問題ないと思います。

YouTube生配信のページ

3.発表について

 今回のイベントは2部に分けて,第1部は研究発表会1日目に行う予定だったのビギナーズセミナー,第2部は研究発表会で発表できなかった研究発表のオーラルセッションとなります。

 個人的な感想ですが,第1部のビギナーズセミナーで博士課程の先輩,大学教員,企業研究者の話が聞けて,アカデミックと企業の選択,研究のモチベーション,仕事のスケジューリングについて大変勉強になりました。第2部のオーラルセッションの発表は,私の専門分野と全く違う分野の内容でしたが,どれでも面白い発表でした。中でもマンガやスマブラに関する発表があって,非常に若手らしくて印象に残りました。

4.展望

 2020年,数多くの学会やイベントは新型コロナウイルスの影響で中止,延期となりました。音響分野のトップコンファレンスであるICASSP2020もバーチャルで行うことになりました。現地で行われる学会と比べて,バーチャルコンファレンスは参加者同士の交流が難しいなどの欠点がある一方,旅費のコストを削減でき,より多くの研究者が気軽く参加できる,というようなアドバンテージもあります。今回のような特別な時期だけではなく,定期的に開催されるバーチャルコンファレンスが今後増えたらいいなと私は思います。

(電気通信大学 任逸)

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イベントを振り返って~運営側からのメッセージ
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 2/27に学会中止の告知を受けて企画を開始してから2週間でイベント当日を迎えました。音声等の配信に技術的な不具合もありご不便をおかけした方も多くいらっしゃったと伺っていますが,常時100名ほど,述べアクセス数ではさらに多くの方にご参加いただいたおかげで盛況のうちにイベントを終えることができました。本当にありがとうございました。Webだったおかげで気軽に参加できた,コメントがしやすかった,といった感想をいただいているほか,音響学会の会員外からの参加もあったようで,オンラインイベントならではの利点を発見する好機にもなりました。

 この3月に当フォーラムで企画・運営していたイベントは「Student Day 2020」「ビギナーズセミナー」「学生ランチミーティング」「学生・若手飲み」の4つですが,そのいずれもが,学会の場を活用し,音響学分野の研究に関わる学生・若手同士の交流を促進したいという目的を掲げています。今回のオンラインイベントでは,ビギナーズセミナー(講演),オーラルセッション(研究発表とディスカッション)の双方のチャンネルを設けることで,学生・若手の交流という当初の目的を(十全ではありませんでしたが)達成できたのではないかと考えています。

 オンラインイベントの継続的な開催は今のところ予定していませんが,本イベントでの学びを踏まえ,今後も音響学に興味のある方への情報発信・交流の機会の提供を目的にさまざまな活動を続けていきます。ひきつづき皆様のご参加心よりお待ちしています。またフォーラム運営に興味のある方はぜひ一緒に活動しましょう!

(米村美紀 イベント班,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士3年)

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国際技術コンペティションDCASE2020 Challenge Task 2の紹介
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 学生・若手フォーラム代表の小泉です。異常音検知の国際技術コンペティション,DCASE2020 Challenge Task 2 “Unsupervised Detection of Anomalous Sounds for Machine Condition Monitoring”をご紹介します。このタスクは日本発で,私を含むNTT,日立製作所,立命館大学の研究者が主催しています。ぜひご覧&ご参加ください!また,非常に分かりやすい紹介記事を執筆してくださった方がおり,主催者の私の説明より1億倍分かりやすいので,ご興味のある方は,ぜひこちらもご覧ください!

 DCASE2020 Challenge (IEEE AASP Challenge on Detection and Classification of Acoustic Scenes and Events) は,環境音を認識する技術に特化した国際技術コンペティションです。毎年,環境音認識に関する5つ程度の課題が出て,世界中の音響技術者が,高精度なシステムの構築を目指して切磋琢磨します。今年の2番目のタスクは,機械の故障を音から検知する異常音検知です。

 異常検知といえば,異常なデータが集まらず,研究開発自体が難しい,という問題がありました。このタスクでは,おもちゃを意図的に壊して収集した異常音検知向けデータセットToyADMOSと,実際の工場機器を壊して収集した異常音検知向けデータセットMIMII datasetをまとめて取り扱いやすくしたデータセットを利用しています。機械は6種類で,おもちゃの車とコンベア,本物のバルブ,ポンプ,ファン,そしてスライダーが利用されています。ダウンロードは“こちら”から可能です,また@daisukelabさんが試聴用にファイルをアップロードしてくださっています[LINK]。皆さん,聞いて違いが分かりますか?開発者の私たちは,なんとなく分かります笑

 ベースラインシステムのプログラムは,Kerasで作ったシンプルなオートエンコーダです[LINK]。Vimと Emacs のように,DNN界隈でも TensorFlow と PyTorch の二大巨塔で宗教戦争(?)が起きていますが,なんと,愛知工業大学の玉森先生とフリーランスの@daisukelabさんが,PyTorch版の実装を公開してくださっています。

玉森先生: https://github.com/tam17aki/dcase2020_task2_baseline

daisukelabさん: https://github.com/daisukelab/dcase2020_task2_variants

 その他にも,@daisukelabさんは,とっても分かりやすい紹介記事を執筆してくださったり,Kaggle にデータセットを公開してくださったりと,多くの方が取り組めるように環境を整備してくださっています。SNSでもじわじわと盛り上がりを見せており,主催者としては望外の喜びです。

 COVID-19の影響で,春の陽気が心地よいのに外に出られない日々が続いています。在宅ワークのお供に,異常音検知,チャレンジしてみませんか?皆様のご参加,主催者一同,心からお待ちしております。

(NTTメディアインテリジェンス研究所 小泉悠馬)

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