ASJ Freshニュース 第70号 - 日本音響学会 学生・若手フォーラム

ASJ Freshニュース 第70号

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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第70号
2020年4月30日 発行
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♪━━━━ 目 次 ━━━━♪*
◆ ASJ beginner’s seminar in VR 参加報告(続報)
◆ Overleaf/GitHub を用いた LaTeX 文書執筆術
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 新学期が始まりましたね!新入生のみなさまはご入学おめでとうございます!新型コロナウイルスの影響で学校が休校,授業がオンラインで行われるなど慣れないことも多い中ではありますが,体調にはくれぐれもお気をつけください.
 今月号では前号にひきつづき,3月開催の「ASJ beginner’s seminar in VR」について講演者の方々や聴講者のみなさまからの感想をご紹介します.また,今話題のブラウザ上でLaTeX文書が作成できるサービス「Overleaf」について,GitHubとの連携を含めた活用方法についてご紹介します.

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ASJ beginner’s seminar in VR参加報告(続報)
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2020年3月15日(日)に本学生・若手フォーラム主催の「ASJ beginner’s seminar in VR」が開催されました.(詳しい内容はこちらから)
ASJ beginner’s seminar in VRは二部構成で行われましたが,
今号では第一部のビギナーズセミナーで講演していただいた方の講演資料のご紹介,講演者の方からVRという環境で講演してみた感想,聴講者のみなさまから講演に関する感想を紹介いたします.

テーマ: 「私の研究のすゝめ方」

内容:研究の進め方は人によって様々です。しかし、研究計画を立てる際や、研究を進めていく中で、周りの研究者はどのようにしているのか知りたいと思うことがあると思います。本セミナーでは、研究を始めたばかりの学部生や自分の研究の進め方を迷っている学生に対して、実験の設定の仕方や論文の書き方などの研究の進め方について、音響学で活躍する研究者の方々に解説していただきます。

発表報告
1. 「博士課程学生の研究のすゝめ方」 菅原 彬子(東京大学大学院)

発表スライド:
http://asj-fresh.acoustics.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/%E8%8F%85%E5%8E%9F_%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E8%AA%B2%E7%A8%8B%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%9D%E3%82%81%E6%96%B9_%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%94%A8.pdf

講演者の菅原様より:
ASJ beginner’s seminar in VRにご参加いただきありがとうございました。初のオンライン開催では、皆様がClusterの機能を使ってたくさんリアクションや質問をしてくださり、心強かったです。対面だと基本的に真顔ですが、今回はワイワイとした感じが出ていて、盛り上がっていましたね。音声が途切れたりということもありましたが、楽しかったです。この形式でのイベントもまたやりたいです!

聴講のご感想:
修士・博士学生としての研究計画とその進め方について分かりやすく聞かせていただきました。大学院を選ぶ際のあれこれ(研究室の選び方・入試対策の方法)は情報が薄く自分も苦労したところだったので、もっと早いうちにこういう話が聞けていたらと思いました。このご時世もあって最近は上手くいかないことばかりですが、上手くいかない研究を改善していくことで乗り越えていかねば! と勇気づけられました。
(慶應義塾大学 社会学研究科 鈴木結子)

2.「大学教員の研究のすゝめ方」 福森 隆寛(立命館大学/助教)

発表スライド:
http://asj-fresh.acoustics.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E6%95%99%E5%93%A1%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%9D%E3%82%81%E6%96%B9.pdf

講演者の福森様より:
今回のビギナーズセミナーが、私にとって人生初のオンライン講演となりました。普段の発表とは異なり、視聴者の顔を直接見られない独特な環境に慣れるのに少し苦労しました(テレビアナウンサー、ラジオDJ、大人気Youtuberは、本当に凄いんだなと実感しました)。そのような中でも、Clusterのエモーション機能やコメントなどを使いながら、聴衆の皆さんにリアルタイムで反応していただけたおかげで、とても楽しく話すことができました。

聴講のご感想:
福森先生のご講演では,大学教員を志した理由や,学生の研究指導や講義の準備等がある中で研究に使える時間をどう確保するかなど,私自身も心がけなければいけないと思うことをレクチャーしていただきました.特に「原稿を書きながら研究を進めるように努める」スタイルは,ぜひ参考にさせていただきたいと思いました.博士後期課程3年目で進路をどうするか悩んでいるタイミングでこの講演を聴くことができてよかったです.
(東京大学 博士課程学生 齋藤佑樹)

3.「企業研究者の研究のすゝめ方」 安藤 厚志(NTTメディアインテリジェンス研究所)

発表スライド:
https://www.slideshare.net/Atsushi_Ando/ss-230273553?qid=a9f9d1a3-24c1-49e2-a2bc-e82a707e9c73&v=&b=&from_search=3

講演者の安藤様より:
VRでの発表は初めてでしたが、運営の方々のサポートもあり、楽しく発表することができました。普段よりも多くの方々に聴講頂けた点や、発表中にも質問やコメントを頂ける点など、VRならではの良さを感じました。一方で、発表者からは聴講者の反応が見えにくいといった難しさもありました。

聴講のご感想:
企業研究者の方の研究の進め方や,効率的に研究を進めるための秘訣についてご紹介いただきました.研究を進める上では,サーベイに基づいて実用性の高いタスクを選ぶことや,誤り分析を通じて失敗しにくいアプローチを選ぶことが重要であると伺い,大変勉強になりました.また,研究時間を増やすためのタスク管理の方法や,モチベーション維持の方法についても伺うことができ,研究活動を行う学生の士気を高めるようなご講演でした.
(北陸先端科学技術大学院大学 坂本貴望)

 

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Overleaf/GitHub を用いた LaTeX 文書執筆術
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はじめに

 大学や研究機関に所属している人の多くが “LaTeX” とよばれる文書執筆環境を利用しています.LaTeX は文章を特定のレイアウト上に組版することに適したテキストベースのオープンソースソフトウェアで,世界中の学術論文や課題レポートの作成に活用されています.
 本記事では,この LaTeX 執筆環境をブラウザ上で即座に構築することができ,共著者との共同執筆が可能な “Overleaf1” というサービスについて紹介します.また,ソフトウェア開発のプラットフォームとして有名な “GitHub2” と組み合わせることによって,LaTeX執筆・共同編集環境をより効果的に実現する方法について紹介します.
※こちらの内容は,2019年3月の日本音響学会2019年春季研究発表会で開催されたビギナーズセミナーで発表した補足資料3の説明になります.

Overleaf を用いた LaTeX 文書の共同執筆

 Overleaf は LaTeX 文書をブラウザ上で執筆することに特化したサービスです.アカウントを作成し,プロジェクトを立ち上げることによって,瞬時に LaTeX 執筆環境を構築することができます4.また,必要なファイルをアップすることで,各種画像ファイルの挿入も可能です.bibファイルを直接アップしたり,Mendeley5 やZotero6 といった文献管理ソフトウェアと連携することによって,参考文献の作成を自動化させることも可能です.
 Overleafの一番のメリットは,LaTeX 文書の共同編集をファイルの競合(コンフリクト)の心配なくリアルタイムで実施できることです.例えば,お互いの LaTeX 執筆環境がローカルにある場合(図1)には,ファイルのやり取りを行うたびに,両者がどの部分が変わったのかを注意深く確認していく必要があります.Overleaf で共同執筆をする場合(図2)には,全ての執筆者が同じ環境にアクセスできるので,データをやり取りした際の編集バージョンのコンフリクトや環境依存のエラーに悩ませることもありません.

fig1_WritingLocalEnv

図1. これまでの共同執筆(ローカル環境のみ)

Overaleafを用いた共同執筆

図2. Overaleafを用いた共同執筆

Overleaf/GitHub を用いた共同執筆

 Overleaf はブラウザベースの執筆環境のため,常時ネットワークに接続されている必要があります.そのため,移動中やネットワーク速度に恵まれない環境での執筆作業には不適です.上記のようなケースが多い場合には,執筆段階のデータを Overleaf とローカルで瞬時に切り替えることができることが望ましいです.その際に活用できるのが GitHub との連携機能です.
 図3に,Overleaf/GitHub を用いた共同執筆環境の概要を示します.事前に GitHub上にリモートリポジトリを作成・登録しておくことで,Overleaf 上でもリモートリポジトリへの push/pull を行うことができます.この作業を普段から実施しておくことによって,ローカル環境での執筆作業に切り替える際には,ローカル環境側からデータを pull することができます.逆にローカル環境での執筆が終わった際には,差分データをリモートリポジトリに push しておくことで,いつでも Overleaf 上での作業に戻ることができます.

Overleaf/GitHubを用いた共同執筆

図3. Overleaf/GitHubを用いた共同執筆

 さらに,Git システムを使用してローカルの執筆環境と Overleaf 上の執筆環境を連携することで,以下のメリットがあります.

  • 自分自身や共著者による編集箇所を,差分データとして表示可能.
    • Overleaf: Wordの校閲機能に似たGUIベースの表示機能
    • Git/GitHub: 差分が発生した箇所を “+/-” で表示 
  • 必要最小限のデータ差分のみを記録・反映するので,比較的早く,少ないデータ通信量での同期が可能.

  • 画像ファイル等の一斉入れ替えやファイル構成といった大規模な変更を,GUIでの操作なしで瞬時に反映することができる.

  • 一時的に Overleaf がサービスを停止していても,ローカル上ですぐに執筆を再開できるバックアップ体制が取れている.

おわりに

 Overleaf と GitHub を連携することで,効率的に LaTeX 文書を共同執筆可能な環境の構築方法について紹介しました.Overleaf の基本機能は無料で使用できます.GitHubとの連携機能は有料アカウント限定となっていますが,大学や研究室によっては Overleaf のライセンス契約を行っているところもあるので確認してみてください.学生の場合は比較的安価で有料アカウントを契約することも可能です.
 また,Overleaf は現在,5月末まで Professional アカウントへの無料アップグレードを実施しています7.このタイミングで最新の LaTeX 共同編集ツールを活用してみるのはいかがでしょうか. 

山本克彦(学生・若手フォーラム幹事会員)

参考文献

  • 坂東, 奥村, 寺田, “インストールいらずのLaTeX入門: Overleafで手軽に文書作成,” 東京図書, 2019.

  • 奥村, 黒木, “[改訂第7版] LaTeX2ε美文書作成入門,” 技術評論社, 2017.

[1] https://v2.overleaf.com/
[2] https://github.com
[3] https://speakerdeck.com/kyama0321/yan-jiu-wohazimetekaraguo-ji-hui-yi-toxue-shu-lun-wen-nicai-ze-sarerumade-webgong-kai-ban
[4] 日本語の文書を作成する際にはひと手間のセットアップが必要です.詳しくは以下の記事を参考にしてください.https://doratex.hatenablog.jp/entry/20180503/1525338512
[5] https://www.mendeley.com
[6] https://www.zotero.org
[7] https://www.overleaf.com/blog/helping-you-collaborate-on-overleaf-during-the-coronavirus-pandemic

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