ASJ Freshニュース 第79号(2021年1月27日号)

SwitchBot & Echo ASJ Freshニュース
スマートリモコン(左: SwitchBot Hub mini)とスマートスピーカー(右: Amazon Echo Dot)

◆ 日本音響学会2021年春季研究発表会 ビギナーズセミナー案内
◆ 自宅でできる音声認識サービス&スマートホーム機器連携

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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース
第79号
2021年1月27日 発行
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あけましておめでとうございます! 年末年始は多くの方が人混みを避けて在宅環境下で過ごされたと思います。 その中でも、次の進路や目標に向かって、研究やお勉強、お仕事に励んでいられると思います。

今月号は、”音響×キャリアパス” をテーマとしたビギナーズセミナーの案内に加えて、自宅で検証可能な音声認識器とスマートホーム機器の連携事例について紹介します!

  1. 日本音響学会2021年春季研究発表会 ビギナーズセミナー案内
    1. 開催概要
    2. 参加方法
  2. 自宅でできる音声認識サービス&スマートホーム機器連携
    1. 1. はじめに
    2. 2. 使用した機器、サービス一覧
      1. 音声認識対応スマートスピーカー
      2. スマート電球
      3. スマートホーム機器(今回は SwitchBot 製の機器で統一しました)
      4. 連携用アプリ/サービス
    3. 3. 事例紹介
      1. A. 買い物リストや ToDo リストに、音声でアイテムを登録する
      2. B. 電球の ON/OFF、明るさや色を、音声で操作する(ネットワーク経由)
      3. C. テレビやエアコン、照明を音声で操作する(赤外線スマートリモコン経由)
      4. D. カーテンを自動的に開閉する
      5. E. 機器や設備の物理ボタンを押す
      6. F. コンセントに接続している機器を通電/遮断する
    4. 4. 音声認識サービスとスマートホーム機器を連携させることのメリット / デメリット
      1. メリット1:リモコン/スイッチにアクセスする必要がなく、雑音環境下でも音声のみで実行できる。
      2. メリット2:定形アクションを設定しておけば、一言だけで全てのアクションを実行できる。
      3. メリット3:部屋ごとに機器のグルーピングが可能
      4. メリット4:Amazon Alexa 対応の他デバイスでも操作可能
      5. デメリット1 :音声認識では複雑な操作が難しい
      6. デメリット2:エアコンの赤外線リモコンの設定が非常に難しい
      7. デメリット3:ネットワークやサーバーの影響を受けやすい
    5. 5. おわりに

日本音響学会2021年春季研究発表会 ビギナーズセミナー案内

日本音響学会2021年秋季研究発表会前日の3/9 (火) 13:00 より、ビギナーズセミナーをオンライン開催します! 
詳細情報は以下のページをご確認ください!

https://asj-fresh.acoustics.jp/?p=1809

開催概要

【日時】2021年3月9日(水) 13:00 – 14:45 (学会前日)
【テーマ】
音響×キャリアパス 〜音を仕事にしてみたら〜
【対象者】音響に興味のある大学生、大学院生、高校生、高専生(春季研究発表会に参加されていない方、音響学会非会員の方も歓迎)

参加方法

【プラットフォーム】Zoomによるオンライン講演会
【会場URL】申し込みされた方にメールにてお知らせします
【聴講方法】参加登録フォーム(https://forms.gle/PHu73q19JNk47wGq6)より申し込み(締め切り:3/3 (水)

自宅でできる音声認識サービス&スマートホーム機器連携

SwitchBot & Echo
スマートリモコン(左: SwitchBot Hub mini)とスマートスピーカー(右: Amazon Echo Dot)

1. はじめに

みなさんはスマートスピーカに搭載されている音声認識技術を、普段の生活でどのように活用されていますか?すでに “Hey, Siri” や “OK, Google”、”アレクサ” のようなフレーズで音声認識を使うことは一般的になりました。しかし、搭載されている音源分離・音声認識技術を知識として持っていながらも、著者はどうしてもスマートスピーカーの活用方法が見いだせないまま過ごしていました。

スマートホーム関係のサービスもその一つです。例えば家庭用ネットワークに接続できるタイプの最新家電は増えていますが、そう簡単には数万円も高い機器を購入することはできません。また、電源の ON/OFF くらいだったら、自分の手で直接ボタンを押してしまえばいいのではないか、と思ってしまうでしょう。

しかし、コロナ禍における在宅勤務や巣篭もり生活の増加によって、在宅環境を見直す必要性が一気に高まりました。著者の場合も、昨年夏の引っ越しをきっかけにスマートスピーカーやスマートホームの技術を見直そうと思いました。特に、在宅でルーチン作業になりがちな生活の一部を自動化することによって、より快適に過ごせないかという思いが強くなりました。たとえば、以下の様な事柄です。

  • 買い物リストに音声で登録する
  • 電球の ON/OFF、明るさや色を、音声で操作する
  • テレビやエアコンを音声で操作する
  • 部屋のカーテンを音声で開閉する
  • コンセント接続している機器を音声で通電/遮断する

今回の記事では、上記の事例について、学生でも実現可能な方法とともに紹介します。また、事例は限られていますが、各種機器やサービスを使用してみた感想についても述べたいと思います。

※ 本記事で紹介する事例は、全て自宅の無線ネットワークに接続可能な前提で説明しています。また、使用した機器やサービスは、著者が個人的な趣味で選別し検討したものであり、紹介した構成が最適解というわけではありません。ご留意ください。

2. 使用した機器、サービス一覧

音声認識対応スマートスピーカー

  • Amazon Echo Dot

スマート電球

  • TP-Link Kasa KL130(フルカラー)
  • TP-Link Kasa KL110(電球色)

スマートホーム機器(今回は SwitchBot 製の機器で統一しました)

  • SwitchBot Hub mini
  • SwitchBot ボタン
  • SwitchBot スマートプラグ
  • SwitchBot カーテン

連携用アプリ/サービス

  • Amazon Alexa
  • Kasa
  • SwitchBot
  • IFTTT
  • Trello

3. 事例紹介

A. 買い物リストや ToDo リストに、音声でアイテムを登録する

Amazon Alexa List
音声認識で登録したアイテムの例(Amazon Alexa 上の買い物リスト)
  • Amazon Echo Dot
  • Amazon Alexa
  • IFTTT(オプション)
  • Trello(オプション)

料理をしているときや、様々な作業をしているときに、次回の買い物で購入したいものをふと思いつくことがあります。その際に、「アレクサ、買い物リストに{購入したい物}を追加」と言うと、Amazon Alexa アプリの “リスト一覧 > 買い物” というリストに瞬時に登録されます。

同様に ToDo リストや自作のリストにアイテムを登録することができます。アイテムが思いついた瞬間に、作業を止める必要なく音声だけで瞬時にリストに登録できることは非常に有用だと思います。

IFTTT(左、中央)によるAmazon Alexa から Trello(右) へのアイテム転送例

同居人と買い物リストを共有したい場合は、別途でデータの転送サービスを使用します。著者の場合は IFTTT 経由で、Trello というタスクボード管理サービスに買い物アイテムを転送するようにしています(上図)。

B. 電球の ON/OFF、明るさや色を、音声で操作する(ネットワーク経由)

音声で照明の明るさや色を制御している様子
  • Amazon Echo Dot
  • Amazon Alexa
  • TP-Link Kara KL130/KL110
  • Kasa

TP-Link 製の電球は、専用の Kasa アプリで無線ネットワークに直接繋ぐことによって、Amazon Alexa や Google Home での操作に対応することができます。電球の ON/OFF は「アレクサ、{電球} をつけて」などと話すことによって実行できます。リモコンを探す必要がない上に、音声だけで実行できるので、寝起きなどに重宝しています。

これらの機器は明るさや色合いを変更することができます。例えば、「アレクサ、{電球} を一番暗くして」と言えば最も暗い明度に変更できます。加えて、フルカラー対応の TP-Link Kara KL130 の場合は「アレクサ、{電球} を {色} にして」と言えば様々な色にすることができました。

C. テレビやエアコン、照明を音声で操作する(赤外線スマートリモコン経由)

音声認識でスマートリモコンを操作して照明を操作している様子
  • Amazon Echo Dot
  • Amazon Alexa
  • SwitchBot Hub mini
  • SwitchBot
  • IFTTT(オプション)
  • Amazon Fire TV Stick (オプション)

赤外線リモコンに対応した機器を音声を操作する場合は、スマートリモコンとして使用可能な SwitchBot Hub mini を使用します。あらかじめ SwitchBot アプリに機器と操作に対応した赤外線信号を登録しておくことによって、Amazon Alexa 上で使用できるようになります。上記の例と同じように、「アレクサ、{デバイス} を点けて/消して」と言えば、SwitchBot Hub mini から赤外線信号が発信され、既存の機器を制御することができます。

SwitchBot を始めとしたスマートリモコンでは、多くの家電メーカーのリモコン情報があらかじめ用意されており、型番が合致すれば多くの機能がすぐに使用可能です。また、テンプレートが用意されていなかったり利用が想定されていない機器の場合でも、アプリ上で新規コマンドを作成することによって、Amazon Alexa で音声操作できるようになります(別途 IFTTT レシピでの連携が必要)。

テレビに Amazon Fire TV Stick を接続していれば、各種動画サービスをテレビで閲覧したいときにも、音声認識で起動することができます。また、テレビがHDMI 機器制御に対応していれば、Fire TV Stick の起動に同期してテレビ画面を起動することもできます。

D. カーテンを自動的に開閉する

音声でカーテンを自動開閉している様子
  • Amazon Echo Dot
  • Amazon Alexa
  • SwitchBot Hub mini
  • SwitchBot カーテン
  • SwitchBot

カーテンレール上に SwitchBot カーテンを取り付けておくことで、既存のカーテンを自動開閉してくれるようになります。機能としてはただそれだけなのですが、早朝に「アレクサ、おはよう」といったコマンドでカーテンが開いて自然光が入ってくれるだけで、起きようとする気にしてくれます。

SwitchBot カーテンは今回紹介している機器で一番高価なものですが、朝起きるのが苦手な著者には一番価値のある機能だと思いました(笑)

E. 機器や設備の物理ボタンを押す

音声で給湯器の電源を点けている様子
  • Amazon Alexa Echo
  • Amazon Alexa
  • SwitchBot Hub mini
  • SwitchBot ボタン
  • SwitchBot 

物理ボタンでの操作が必要な機器の場合は、Amazon Alexa と連携可能なモータ付き端末を使用します。SwitchBot ボタンの場合は、両面テープでボタン付近に貼り付けておけば、自身のアームをモーター駆動することによりボタンを押してくれます。

例えば、この SwitchBot ボタンを給湯器モニタの電源ボタンに貼り付けて置くことによって、「アレクサ、ただいま」という音声を認識して、自動で給湯器の電源を点けてくれるようになります。寒い冬の帰宅時に手を洗っている最中に「給湯器点けるの忘れてた…」と落ち込むことが無くなります。

F. コンセントに接続している機器を通電/遮断する

音声で電気機器の電源プラグを遮断している様子(紫色から青色に表示が変わっている)
  • Amazon Alexa Echo
  • Amazon Alexa
  • SwitchBot Hub mini
  • SwitchBot プラグ
  • SwitchBot

電源タップ型のスマートプラグを使用すれば、コンセントに接続している機器を通電/遮断することができます。外出時や就寝時に電気的に遮断しておきたい機器で使用すると効果的です。

4. 音声認識サービスとスマートホーム機器を連携させることのメリット / デメリット

上記の通り、今回の検証では様々な機器やサービスとの連携を事例ベースで試してみました。その中で感じたメリットとデメリットについて簡単に列挙します。

メリット1:リモコン/スイッチにアクセスする必要がなく、雑音環境下でも音声のみで実行できる。

機器の操作をする際に困るのが、リモコンやスイッチの場所がわからなかったり、それらが手の届かない場所にあることです。音声認識を活用すれば、

  • 接続している機器の電源の ON/OFF 
  • タイマーの起動
  • 買い物リストへの登録

といった、今すぐしたいアクションをすぐに実行できるのは良いことだと思いました。また、テレビから音が出ていたり、キッチンで料理をしている最中で遠方から話しかけても、Amazon Alexa Echo スマートスピーカーに搭載された音源分離や雑音抑圧技術によって、それなりに認識してくれました。

メリット2:定形アクションを設定しておけば、一言だけで全てのアクションを実行できる。

Amazon Alexa アプリ上でテンプレートを作成しておけば、ワンフレーズで全てのアクションを自動で実行してくれるようになります。

特定の音声認識コマンドで一括操作する定形アクションの例

例えば、朝起きたいときに布団から「アレクサ、おはよう」と言えば

  • 部屋のカーテンを開け、自然光を取り込む
  • 電球や照明を点灯する
  • テレビやエアコンを ON にする
  • 給湯器の電源を ON にする

といったことを自動で同時にやってくれると、気持ちよく起床できます。

また、外出時には「アレクサ、行ってきます」と言ったときには、以下のことを自動化してくれます。

  • 部屋のカーテンを閉める
  • 電球や照明を消灯する
  • テレビやエアコンを OFF にする
  • 給湯器の電源を OFF にする
  • コンセント接続している機器を遮断する

メリット3:部屋ごとに機器のグルーピングが可能

複数の部屋でスマートホーム機器を動作させたい場合は、Amazon Alexa アプリ上で部屋ごとグルーピングが可能です。これによって「アレクサ、{部屋} の {照明} をつけて」と言った特定の照明への命令が可能になります。

スマートホームをそれぞれの部屋に配置することで、音声を認識した部屋に紐付けられている機器を優先的に制御することも可能です。例えば、スマートスピーカーが設置している部屋にいるときに「アレクサ、{照明} をつけて」と言えば、その部屋の照明のみを点灯させることができます。

メリット4:Amazon Alexa 対応の他デバイスでも操作可能

最近のスマートウォッチやヘッドホンは、 Siri、Google Home、Amazon Alexa といった各種連携サービスにも対応しています。つまり、今回使用したスマートスピーカー以外でも同様の操作が実行できるようになります。

著者の場合は普段身につけている fitbit versa 2 で Amazon Alexa に対応しているので、買い物リストへの登録にスマートウォッチ上の音声認識機能も併用しています。これであれば、出先でもすぐに実行できます。

もちろん、スマホ上の Amazon Alexa や SwitchBot アプリ経由で、自宅の照明等を操作したり消費電力等をモニタリングすることもできます。スマートホーム機器特有のメリットだと思います。

デメリット1 :音声認識では複雑な操作が難しい

基本的に操作を開始するためのコマンドが「アレクサ、〜をして」となるので、一度のコマンドで操作できる範囲が限られています。リモコンであればボタン数タップで制御可能なことが、音声コマンドを何度も繰り返す必要があります。

解決策としてはメリット2で述べたように、定期的に実施するものはあらかじめテンプレート化しておくことが挙げられます。

デメリット2:エアコンの赤外線リモコンの設定が非常に難しい

スマートリモコンではエアコンの赤外線リモコンの設定も可能ですが、エアコンの赤外線コードの仕様は非常に複雑な上に、メーカーや型番でも異なるので、設定が非常に難しいです。また、備え付けの赤外線リモコンが OFF になっている状態では、起動・制御しているエアコンが冷房なのか暖房なのか、設定温度がどうなっているのかさえわかりません。

そういった面から、一般的なエアコンを音声で操作することは難しいと考えられます。解決策としては、Google Home や Amazon Alexa からのネットワーク制御に対応している機器を購入するのがベストだと考えられます。

デメリット3:ネットワークやサーバーの影響を受けやすい

研究や業務に必要なクラウドサービス同様に、Amazon Alexa や SwitchBot で使用しているサービスもネットワークやサーバーの影響を受けてしまいます。ネットワークやサーバーに障害があると、デバイスを制御することによって実現していた処理は、復旧までの間は使用できなくなってしまいます。

そのような問題があることから、個々の機器に対応した赤外線リモコンを完全に撤廃することは、現時点では避けたほうが良さそうです。また、ドアロックを始めとした比較的重要な部分への導入は十分に検証を行ってから進めたほうが良いと思います。

5. おわりに

本記事では、コロナ禍の中で在宅環境の改善を目的として、音声認識サービスとスマートホーム機器の連携事例を紹介しました。実際に機器やサービスを自宅に導入して体験してみることで、そのメリットやデメリットを沢山知ることができました。また、今回の事例で紹介した機器やサービスは、比較的低コストで導入可能であることがわかりました。

本記事を読まれている学生の皆様の多くは、音響に関する研究や勉強をされていると思います。皆様が学ばれたことのある音声認識や音源分離を始めとした技術は、非常に多くの機器やサービスで実際に使用されており、ユーザー自身がその連携方法を決めることもできるようになっています。そのような機器やサービスを実際に自身の生活に導入して体験してみることで、新たな研究アイデアや性能改善手法、ビジネスアイデアを思いつくきっかけになると思います。

今回の事例を読んでみて、「自分でもできそう」、「自分ならもっと面白いことができる」と思った方は、是非試してみてください。もし面白いことができた場合は、各種研究会や技術コンテストで発表してください!

(山本克彦 若手フォーラム幹事委員)

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