◆ 音学シンポジウム2024参加報告
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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第118号
2024年07月01日 発行
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はじめに
今月号のASJ Freshニュースは,6月14, 15日に開催された音学シンポジウム2024(第140回音楽情報科学・第152回音声言語情報処理合同研究発表会)の模様をレポートします!
音学シンポジウムとは?
音にまつわるすべての研究分野を対象にシングルトラックで進行するシンポジウム,それが「音学シンポジウム」です.
(読み方は「おんがく」・「おとがく」どちらなのかは決まっていないらしいのですが,本シンポジウムの理念である「音(おと)にまつわる全ての学問」ということで「おとがく」派が多いのだとか 参考)
豪華招待講演
豪華研究者陣による招待講演は本シンポジウムの大きな目玉です.毎年,音分野の第一線で著名な業績を上げられている研究者の方々が,分野の動向からご自身の研究まで分かりやすく解説してくださいます.まさに音分野の研究を始めたてのビギナーにうってつけ!かくいう私も最初に参加した国内研究会は音学シンポジウム(2015年)だったりするのです.
今年は,以下の方々(敬称略)をお呼びして,古典的な手法から最先端の知見まで盛りだくさんな内容のご講演でした.
- 塩田 さやか(東京都立大学), 俵 直弘(日本電信電話株式会社):
「初学者のための話者認識入門:基礎技術と応用」(当日のスライド) - 古川 茂人(静岡社会健康医学大学院大学), 上村 卓也(日本電信電話株式会社):
「聴覚の時間情報処理:心理物理学・神経生理学・深層学習によるアプローチ」 - Sadakata Makiko(University of Amsterdam):
“The effect of repetition on speech and music perception: a cross-linguistic approach” - 安 啓一(筑波技術大学):
「聴覚障害と音楽の関係~ろう・難聴者における音楽活動~」 - 平賀 瑠美(筑波技術大学):
「ろう・難聴者の音楽世界を覗いて」 - 須藤 克仁(奈良女子大学):
「自動同時音声翻訳のこれまでとこれから」 - 坂東 宜昭(産業技術総合研究所):
「ブラインド音源分離の基礎と多チャネル自己教師あり学習への発展」
学生・若手・ベテラン問わず大盛況のポスター発表
毎年数十件もの申込がある怒涛のポスター発表ですが今年も大盛りあがり!
学生・若手・ベテランを問わずどの発表にも熱気のようなものがみなぎっていました.
後日,X(元 Twitter)上でもポスターや当日の模様を投稿してくださった方がいらっしゃいましたのでご紹介します.
掲載をご快諾いただいた皆様ありがとうございました.
1日目 (5) [一般発表] 複数話者の擬音的発話音声データセットによる効果音合成の試み
○滝沢 力, 平井 重行(京都産業大学)
1日目 (7) [一般発表] 「キミは私の声,好きかな?」 大規模主観評価による声質好感度コーパスの構築とその分析
○須田 仁志(産業技術総合研究所), 渡邊 亞椰(東京大学), 高道 慎之介(東京大学/慶應義塾大学)
1日目 (14) [一般発表] 離散音声トークン生成によるテキスト音声合成のための音声主観評価値予測に基づくdecoding戦略
◎山内 一輝, 中田 亘, 齋藤 佑樹, 猿渡 洋(東京大学)
1日目(16) [一般 発表] 実応用に向けた複数コーパスを用いた音声感情認識の分析
◎林崎 由, 駒形 晃太, 能勢 隆, 伊藤 彰則(東北大学)
フォーラムメンバーが面白いと思ったポスター発表
ここで今月号担当のメンバーが非公式で勝手にそれぞれ独断と偏見で最も面白い発表をご紹介いたします.
主担当 小口賞
(63) [一般発表] 位相差に着目した重畳音声の分析とその応用に関する実験的検討
◎工藤 佑太, 朴 浚鎔, 齋藤 大輔, 峯松 信明(東京大学)
単一の歌唱音声を加工して斉唱音声を合成する試みの一環として,ある操作によって位相をずらして重畳された歌声は1オクターブ高いピッチとして知覚されるという面白い現象を報告しています.デモ音声を聴いたときの驚きと,仕組みが分かったときの納得感が決め手です.
副担当 中澤賞
(15) [ディスカッション] 感情認識ベンチマーク作成に向けた人間の感情認識能力の分析
◎駒形 晃太, 林崎 由, 能勢 隆, 伊藤 彰則(東北大学)
感情データセットの音声を人に聞いてもらったらどのように認識するかを分析をしていて面白いなと思いました.音声だけではデータセットの話者の意図した感情を認識するのは意外と難しいそうです.発話者の感情ラベルだけではなく聞き手の知覚結果もあれば感情認識システムを作成する際に比較や分析ができるようになって面白そうだなと思いました.
おわりに
今年も大盛況だった音学シンポジウムの模様をお送りしました.ASJ だと全ての分野を回り切るのは大変ですが,本シンポジウムは様々な音分野の研究発表を2日間でコンパクトに聴けるのでおすすめです.また,同じ音楽系や音声系の発表でもASJとはまた違った趣があり,発表内容の傾向も異なるので,いつもはASJだけという方もぜひ参加してみてはいかがでしょうか?