◆ ビギナーズセミナー「スペクトログラムから紐解くデジタル信号処理の基礎」開催報告
◆ 2021年日本音響学会秋季研究発表会 参加報告
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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第86号
2021年9月29日 発行
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はじめに
みなさんこんにちは!今月号のASJ Freshニュースは,9月に開催された学生・若手フォーラム主催のビギナーズセミナーの開催報告と,日本音響学会2021年秋季研究発表会の参加報告です!
ビギナーズセミナー「スペクトログラムから紐解くデジタル信号処理の基礎」開催報告
日本音響学会2021年秋季研究発表会前日の9/6(月)に,ビギナーズセミナー 「スペクトログラムから紐解くデジタル信号処理の基礎」を開催しました。本セミナーは,音響学の全ての分野が関わる信号処理について,最近初学者向けの著書を出された先生をお招きし「音声の分析と合成」「音源分離」をテーマに講演いただきました。
森勢先生(明治大)からは,離散フーリエ変換,時間周波数解析における窓関数などの基礎事項から,音声分析合成の例としてスペクトル包絡推定について解説いただきました。戸上様(LINE)からは,オンライン会議における音源分離というニーズからスタートし,音源分離の手法についてご紹介いただきました。講演で使用された資料と発表者様が執筆された関連書籍を,イベントHPに掲載しています。ぜひご覧ください。
日本音響学会2021年秋季研究発表会 ビギナーズセミナー「スペクトログラムから紐解くデジタル信号処理の基礎」(オンライン開催)
セミナーには170名を超える方の参加をいただき,セミナー後実施したアンケートに64件の回答をいただきました。アンケートでは,学年,学会への参加経験,興味のある分野などについてお伺いしました。およそ半数が学部学生,高専生,高校生であり,これから本格的に研究をはじめようという方に多くご参加いただけたようです。基礎から実用例まで幅広くご紹介いただいた講演だったため,初学者・他分野の方には難しく感じられた部分もあったかと思いますが,今後の研究活動を進められる際の参考になれば幸いです。
学生・若手フォーラムでは,2022年3月の音響学会でもセミナー等の企画を予定しています。イベントに関するご意見やご要望があれば,ぜひTwitter(@ASJFresh)やメール(asj.fresh.event@gmail.com)にてお寄せください。
(米村美紀 東大生研/学生・若手フォーラム イベント班)
2021年日本音響学会秋季研究発表会 参加報告
はじめに
9/7(火)〜9/9(木)の3日間,2021年日本音響学会秋季研究発表会が開催されました。今回もオンライン(https://www.mtg.acoustics.jp)のみでの開催となりましたが,発表件数としては500件超,参加者数は約1200名にもなりました。オンラインでの参加だと周囲の聴講者の様子を見渡すことはできませんが,どのセッションも沢山の参加者が聴講されており,様々な議論が行われていました。
発表について
今回印象に残った発表として,COVID-19に関係した一連の音声研究[1][2]が挙げられます。マスクを装用していない状態での会話や発声が,感染リスクにどの程度影響があるのかを,スーパーコンピュータ富岳での数値シミュレーションや声道模型を用いて検証した結果について紹介されていました。特に声道模型を用いた飛沫の可視化については,これまで音声生成過程を物理的に理解するために作られていた声道模型が,マスク無しで発声した際の感染リスクの理解に役立つことが驚きでした。
オーディオに関する国際標準化動向を紹介するセッションでは,世界的な騒音性難聴者の増加を防ぐために,ITUとWHOによって規定された“Safe Listening”のためのガイドライン ITU-T Rec. H870 が紹介されていました[3]。この国際標準では,一週間の累積的な音曝露量を定義しており,この累積量を超える可能性がある場合は,システム側で通知・低減するような仕組みが推奨されています。実際にスマートフォン等ではこの機能を搭載しているものもあります。若年者でも大音量で音楽を聞くことによって,騒音性難聴になるリスクは十分にあります。今回の発表では,標準化の背景や取り組み動向について詳しく聴くことができてよかったです。
懇親会について
今回の音響学会では,COVID-19で現地開催ができなくなって以降,久しぶりに懇親会が開催されました。懇親会ではGather(https://www.gather.town)というツールが使用されていました。
Gatherでは,レトロなRPG画面上で自身のキャラクター(図1)を動かすことによって,参加者の方々と繋がることができます。最初は通りすがりの知り合いに話しかけることや,適切な距離感を保つことに苦労しましたが,後半になるにつれて慣れることができました。懇親会の開催前には,運営担当の先生方が,初心者向けに何度も使い方をレクチャーされていました。その結果,若手だけでなくベテラン研究者の方々も続々とGatherに参加され,多くの学生・研究者と交流することができました。
COVID-19が落ち着くまではオンライン開催の形式が続くと思われますが,学生や研究者間で交流するためのツールは日々進化していると感じています。例えば,現地参加が難しいご年配の(レジェンド級の)研究者の方々とオンラインでお話を伺うこともできるようになり,現地開催ではできない体験もあることがわかってきました。
学生・若手研究者の皆様も,ぜひこのような状況を活用して,新たな知見を得ることや,ネットワークを構築することにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。学生・若手フォーラムでは,今後も新しい交流の場を日々検討しておりますので,ぜひご期待ください。
(加藤集平,山本克彦 学生・若手フォーラム コンテンツ班)
参考文献
[1] 飯田, 吉永, “会話がCOVID-19の感染リスクに及ぼす影響,” 音講論,1-8-7, 日本音響学会2021年秋季研究発表会.
[2] 荒井, “声道模型を用いた音声生成時における飛沫の可視化,” 音講論,1-8-8, 日本音響学会2021年秋季研究発表会.
[3] 川森, Chadha “ITU-WHOのSafe Listeningに関する新国際標準について,” 音講論, 2-2-8, 日本音響学会2021年秋季研究発表会.