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日本音響学会 学生・若手フォーラム
ASJ Freshニュース 第66号
2019年12月25日 発行
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*♪*━━━━* 目 次 *━━━━*♪*
◆ 日本音響学会 Student Day 2020開催案内
◆ 国際会議 WASPAA, SANE, DCASE参加報告
◆ 国際会議 APSIPA参加報告
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今年もいよいよ残りわずかとなってしまいましたが、B4、M2の皆さん卒論、修論の進捗はいかがでしょうか?
今月号も内容たっぷり:日本音響学会春季研究発表会前日に開催する学生イベントStudent Day 2020の案内、本フォーラム代表の小泉からの国際会議 WASPAA, SANE, DCASE 参加報告、国際会議APSIPA参加報告をお届けします。
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日本音響学会Student Day 2020開催案内
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2020年3月15日(2020年春季研究発表会の前日)に,「日本音響学会 Student Day 2020(旧: 学生研究交流会)」が開催されます。
本イベントは,日本音響学会研究発表会に初めて参加する,または興味がある初学者に対し,音響学の各分野の予備知識の予習や,学生間の研究発表及び情報交換により音響学への理解と興味を深めることを目的としています。
詳細はこちらをご覧ください: https://asj-fresh.acoustics.jp/?p=1217
イベント概要:
【日時】2020年3月15日(日) 13:00-18:00
【参加費】無料
【対象】学生(会員外の方も歓迎します)
【会場】NBF大崎ビル (旧: ソニーシティ大崎) 東京都品川区大崎2-10-1
【発表申込締切】2020年2月21日(金)
Student Day 2020 |
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国際会議 WASPAA, SANE, DCASE 参加報告
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学生・若手フォーラム代表の小泉です。10月20~26日にニューヨークで行われた3つの国際会議、WASPAA(IEEE Workshop on Applications of Signal Processing to Audio and Acoustics)、SANE(Speech and Audio in the Northeast)、DCASE(Workshop on Detection and Classification of Acoustic Scenes and Events) に参加し、異常音検知や音響イベント検出に関する5件の発表をしてきました。1週間、ニューヨークで音響信号処理の学会を回り続けるというタフな出張でしたが、様々な知見を得ることができました。各会議の特徴や会場の様子をご報告します。
- WASPAA 2019
WASPAAは、2年に一度(西暦奇数年)に開催されるIEEE Signal Processing Society主催の電気音響分野(IEEEではaudio and acoustic signal processing; AASPと呼ばれる)の秋のトップカンファレンスです。マンハッタンからバスで2時間ほど北に行ったニューパルツという街にある風光明媚なリゾートホテル Mohonk Mountain House で開催される合宿形式の会議です。シングルトラックで会議が進行するため採択件数は少なく、今年の採択率は他の音響分野のトップカンファレンスより低い43%でした。
AASPの分野では深層学習以外の研究も多数行われています。これは、実環境での音の観測や再生では、音波の物理法則と信号処理が切っても切れない関係にあるためです。物理現象をコントロールしたり模擬したりするチャレンジングな研究もたくさん発表されています。WASPAAでも、3割程度の研究が信号処理に関する研究でした。またここ数年では、深層学習を利用して環境音を認識する研究が大きな盛り上がりをみせています。後述するDCASEもこの技術に関する会議であり、WASPAAでも多数の研究が発表されていました。私の機械の音から故障を検知する「異常音検知」に関する2件の発表もこの分野に関連する技術です。
WASPAAには世界中から音響信号処理のトップ研究者が集まり、朝から晩まで研究に関する深い議論を行います。また、豪華な朝昼晩の食事や、夜のドリンクパーティで人脈形成をしたり、お昼の休憩時間などを利用して美しいホテルや景色を楽しんだりすることができます。難易度は高い会議ですが、ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。
WASPAAポスター会場 |
WASPAA会場のホテル |
- SANE 2019
SANEは、GAFAやMERLなどの北米東海岸の音声音響研究者が中心となって行なっている、音声音響信号処理に関する参加費無料のミートアップイベントです。毎年、産学から豪華な招待講演を集め、最先端の技術について講演を行います。また自身のポスターを発表することもできます。WASPAAが開催される年はWASPAAの翌日に、マンハッタンで開催されます。今年は、コロンビア大学が会場でした。
今年は、Facebook, Google, IBM, NTT, Oldenburg大, Texas大, TTI-Chicago(アルファベット順)からの招待講演があり、音声認識/合成/変換や音響信号処理、動画と音声を利用したマルチモーダル音源分離技術なども紹介されていました。深層学習の登場以降、音だけでなく画像や言語など様々なモーダルを組み合わせることで信号処理の性能を向上させる研究が、世界的に流行してきているようです。これらの講演の動画は YouTube にもアップロードされています [URL: https://www.youtube.com/watch?v=RH0oy67i3T0&list=PLBJWRPcgwk7tpKerFom1I2iaw6IvdJtrh]。
SANEだけのためにニューヨークへ出張することは難しいでしょうが、WASPAAに参加することがあれば、そのままSANEに参加してみてはいかがでしょうか?とても informative ですし、ポスター会場では世界的に有名な研究者と議論することもできます。NTT研究所からも3件のポスターを発表し、議論を楽しむことができました。
SANE会場コロンビア大学 |
- DCASE 2019
DCASEは、環境音を認識する技術に特化した国際ワークショップです。併設されている環境音認識の国際コンペティション “DCASE Challenge” で登場した技術やその結果、また新しい環境音認識の技術に関する議論が行われています。2016年から始まった今年で4回目となる新興のワークショップで、年々参加者が増えており、今年の参加者は200名を超えました。
新興分野ということもあり、一体何を認識すればいいのか?どんな出力をすればいいのか?どんな手法を使えばいいのか?どんなアプリケーションができるのか?と様々な議論が重ねられています。NTT研究所からも、環境音から「いつ」「どこで」「なにが」起きたのかを推定するためのデータ拡張法を発表しました。新しい分野だからこそ、いろんなことにチャレンジできますし、新しい技術分野を確立できればすぐに世界のトップランナーになれる、そんなワクワクする会議です。
なお、【来年のDCASE 2020 は日本開催です!!】10月末に東京都国分寺市にある、日立中央研究所で行われます(https://www.youtube.com/watch?v=hyRWdlxouK4)。私も主催者の一人として会議運営に携わっております。皆様のご参加、お待ちしております!
DCASE会場の様子 |
DCASE 2020は日本開催! |
- おわりに
ニューヨークは2度目でしたが、タイムズスクエア周辺は様々な人がいて活気にあふれています。日本にも出店していますが、本場のShake Shack は日本とは少し味が違い、とてもおいしかったです。同僚は、ジャズバーを楽しんだり、ポートオーソリティ(マンハッタン最大のバスターミナル)でピアノを演奏したりと楽しんでおりました。2年後もまた参加したいですし、皆様も是非、ご参加してみてください。
(NTTメディアインテリジェンス研究所 小泉悠馬)
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国際会議 APSIPA 参加報告
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◎はじめに
APSIPA ASC(Asia-Pacific Signal and Information Processing Association Annual Summit and Conference)は、アジア地域を中心に毎年開催される信号処理分野の国際会議です。APSIPA ASC2019では、2019年11月18日から21日に中国・蘭州で開催されました。
◎APSIPA ASC2019の様子
今回の会場はGansu International conference Centerという会議場で、部屋数の多い会場でした。その会場付近にホテルが用意され、参加に際し移動が苦になることはありませんでした。会場には常に軽食が用意されており、リラックスして発表が聞ける居心地の良い会場でした。ポスターセッションはエレベーターホール付近で行われ、賑わいがあり活発な議論がされていると思いました。分野として音声・音響が多く画像は少なかった印象を抱きました。4日間の学会では、ランチやディナー、バンケット、ツアーと様々なイベントが開催され、他の研究者の方々とも交流が出来ました。バンケットでは、中国の伝統舞踊を初めとした演舞やヌンチャクを用いた演武が行われ、文化の違いを肌で感じられ感動しました。
APSIPA ASC 2019 |
◎発表について
弊研究室の参加メンバーは皆オーラル発表で、個人的には英語によるオーラル発表は今回が初めてのため緊張していました。しかし、発表に慣れている先輩方に励まされ自身としても満足できる発表にすることが出来ました。発表後に質問を2,3受けましたが、質問内容を完全には理解出来ず回答の質が低くなってしまったことが心残りとなりました。一方で、国境を超えたコミュニケーションを取る手段としての英語の便利さを実感し、今後とも継続して英語力を養いたいと思いました。
そして、研究室の先輩方の発表を聞き、優秀な方々に囲まれて恵まれた環境に身を置いていると自覚する必要があると感じました。
発表の様子 |
◎蘭州観光と現地学生
蘭州へは北京空港を経由して到着し、APSIPA側が手配してくれたバスに乗り学会場付近へたどり着きました。蘭州と言えば蘭州拉麺(牛肉麺)の知名度が高く、牛肉麺屋が歩けば目に付きました。私もホテル近くのお店でいただきましたが、あの美味しさで約10元という安さに驚きました。ホテルの朝食にも用意されるほど市民に愛されているようで、私も会期中、毎朝、牛肉麺を食べていました。学会中では、蘭州の学生ボランティアの方々と交友を持つことも出来ました。とても友好的で親睦を深めることができ、ツアーの際には一緒に息を切らしながら山に登ったのは良い思い出です。
蘭州拉麺 |
山登り |
◎おわりに
次回のAPSIPA ASC2020は、ニュージーランドのオークランドでの開催が予定されています。機会があればまた参加したいと思える学会でした。
(首都大学東京大学院 矢口凌也)