ASJ Freshニュース 第99号 (2022年12月1日号) 

◆ APSIPA ASC参加報告 

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日本音響学会 学生・若手フォーラム 
ASJ Freshニュース 第99号 
2022年12月1日 発行 
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はじめに 

みなさんこんにちは!カラッとした秋晴れも多かった11月も過ぎて,いよいよ年の瀬も近づく12月になりました.今月号のASJ Freshニュースは,11月にタイのチェンマイで開催されたAPSIPA ASCの参加報告です! 

APSIPA ASC 2022参加報告(早稲田大 田中さん) 

あいさつ 

早稲田大学大学院 博士1年の田中です.今回は,2022年11月に開催されたAPSIPA ASC (Asia-Pacific Signal and Information Processing Association Annual Summit and Conference) 2022の参加報告をします. 

はじめに 

APSIPA ASCは,信号処理や情報技術,通信における研究と教育を推進するAPSIPAが,年に一度開催している国際会議です.APSIPA ASC 2022は,2022年11月7日から10日にかけて,タイのチェンマイで開催されました.本会議は2009年のAPSIPA設立以来毎年開催されてきましたが,新型コロナウイルスの流行開始以来オンライン開催が続き,ようやく本年に対面開催が再開されました. 

会議の様子 

本年の会議は,エンプレスホテルチェンマイにおける対面発表を原則とし,やむを得ない場合のみ事前収録ビデオを用いたリモートでの発表という形式でした.実際には多くの方が現地参加されていて,賑やかな雰囲気だった印象があります.初日のチュートリアルを除く3日間,一度に8つのセッションが同時に進行し,1人あたり持ち時間20分(発表15分,質疑5分)の口頭発表とキーノートスピーチが行われました.休憩時間には飲み物とスパイスの効いた美味しいお菓子がホテルより提供されたほか,お昼やバンケットではたくさんの豪勢な料理が振る舞われました.みなさん舌鼓を打ち一息つきながらも,近況報告や議論が活発に交わされていました.また,参加者にはノベルティとして,タイの伝統工芸をモチーフにしたトートバッグや象をあしらったストラップも配られ,会議そのものだけでなく現地の風土や慣習も楽しむことができる,非常に有意義な会議でした.会場の冷房がなかなかに強く,聴講して長袖を羽織りタイにいることを忘れては,日中外に出て暑さにうだりタイにいることを思い出す,ということを私は繰り返していました. 

会場の街の様子 

タイは敬虔な仏教国であり,チェンマイ市内のいたるところに仏像が祀られていました.中でも,ターペー門とよばれる史跡には大きな仏像が複数鎮座しており,現地の方・観光客を問わず多くの方が拝観に訪れていました.ですが今回特筆すべきは,会期中のタイが旧暦12月の満月の夜に当たっていたことでしょう.これに合わせてチェンマイでは,ロイクラトンとコムローイという二つのお祭りが行われていました.ロイクラトンは川に灯籠を流すことで川の女神へ,コムローイは空にランタンをあげることで天上の仏様へ,それぞれ感謝の気持ちを捧げる行事です.例年,本会議は12月に開催されますが,本年はこれらの催し物に合わせて11月開催となった経緯があります.日中のプログラム終了後は,このように異国情緒あふれるチェンマイの雰囲気を味わいつつ,参加者間で親睦を深めることができました. 

名古屋大学 修士2年 橋爪優果さんご提供 

自身の発表内容 

私は,楽器音の分離潜在表現に関する研究を発表しました.従来,楽器音は音高(ピッチ)と音色(楽器)の2要素へ還元することができるという見地が一般的でした.しかしながらこの枠組みでは,同じ楽器でも演奏方法が異なる場合,別の楽器として扱われてしまいます.例えば,ヴァイオリンは弓で持続的に弾くこと(レガート)もあれば,同じく弓で断続的に弾くこと(スタッカート)もありますし,さらには指で弦をはじくこと(ピッチカート)もあります.これらそれぞれが異なる楽器として扱われると,楽器認識を行う際に誤りが生じてしまいます.提案法では,従来の2要素に加え,奏法や音量などを表すための新たな要素を用意することで,この問題に対処しました.これによって,異なる2つの楽器音の奏法を入れ替えることも可能となり,スタイル変換への応用可能性も示唆されています.分離潜在表現の獲得に際しては,入力摂動と古典的なケプストラム分析を援用した,変分自己符号化器に基づく定式化により,教師なし学習を行います.私のものを含め本会議で発表された論文は,IEEE Xplore上で公開される予定です.また,すでに著者によってarXiv上で閲覧可能となっているものもあります.気になる論文がありましたら,ぜひご覧ください. 

むすび 

私はいま博士1年ですが,コロナ禍の影響を受け続けた結果,実は今回が(国内も含めて)はじめての対面発表でした.発表合間のディスカッションやテーブルを囲んでの食事,日没後の親睦会など,オンライン発表では決して得られなかった機会に恵まれた結果,10人以上の海外の方々,さらには20人以上の日本の方々とお近づきになることができました.それまで論文上のお名前でしか知り得なかった方々と実際にお会いできたことは,私にとって大変嬉しく,非常に貴重な経験でした.来年のAPSIPA ASC 2023は,台湾の台北で開催されます.ぜひ発表をご検討なさってみてはいかがでしょうか. 

(田中啓太郎さん/早稲田大学大学院 先進理工学研究科) 

おわりに 

先月号に続き,国際学会の参加報告でしたが現地開催ならではの経験はかけがえのないものがありますね.筆者の在学中はほとんどがオンライン学会だったので久々に現地の学会にまた参加してみたいですね.

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